VA基準(付加価値基準)で合格率を上げるためには、どの費用を「分母(売価)」に残し、どの費用を「分子(非原産材料費)」から除外できるかという仕分けの技術が不可欠です。
1. 原産材料(VOM)と非原産材料(VNM)の境界線
VA計算の際、材料は以下の3つに厳格に仕分けます。
| 材料のステータス | VA計算上の扱い | 判断基準とリスク管理 |
| 原産材料 | 除外(分子に入れない) | 「サプライヤー証明書」等で日本製と証明できるもの。 |
| 非原産材料 | 算入(分子に入れる) | 海外から直接輸入した材料。 |
| 原産性不明材料 | 算入(保守的アプローチ) | 国内で買ったが、原産地を証明できないもの。 |
なぜ「不明」はすべて「非原産」にするのか?
実務において、国内の商社や販売店から購入した部品の「真の原産地」が分からないケースは多々あります。
- 保守的アプローチの原則: 税関の事後調査(検認)では、「証明できないものはすべて外国産」とみなされます。
- リスク回避: 「国内で買ったから日本製だろう」という安易な推測で判定を行うと、後で「実は輸入品だった」と判明した瞬間に、判定がひっくり返り、多額の追徴課税が発生します。
2. 「間接材料」の特殊な扱い:判定の救世主
製造現場で使用されるもののうち、製品の一部にならない「間接材料」は、VA判定の計算(分子)に一切含めなくてよいというルールがあります。
- 間接材料の例:
- 燃料、エネルギー、溶剤
- 設備メンテナンス用のグリス、潤滑油
- 作業員が着用する手袋、安全靴、メガネ
- 検査用の試薬や測定器具
- 実務上のメリット:
- これらが「海外製」であっても、非原産材料(VNM)としてカウントする必要はありません。
- したがって、間接材料の原産地を調査する必要も、証明書を集める必要もありません。
3. 梱包材料(Containers and Packing Materials)の扱い
輸送用の梱包と、小売用の容器では扱いが異なります。
- 輸送用(パレット、コンテナ、木枠など):
- 原則として、判定の計算からは完全に除外します。
- 小売用(個装箱、化粧箱、ボトルなど):
- CTC基準の場合: 包装のHSコードが変わっていなくても無視できます。
- VA基準の場合: 包装の費用も**「材料費」の一部**として計算に含める必要があります。
- つまり、小売用の箱が海外製であれば、それはVNM(非原産材料費)に加算されます。
4. 附属品、予備品、工具(Accessories, Spare Parts, and Tools)
製品とセットで出荷される標準的な付属品(例:テレビのリモコン、家具の組み立てレンチ)は、製品の一部として扱われます。
- 条件: その製品に対して「標準的」な範囲内であること。
- 計算: 付属品の価格も材料費としてカウントします。付属品が海外製であればVNMに含めますが、製品全体の付加価値率を大きく下げることは稀です。
5. VA基準を「安全」に運用するための実務フロー
- BOM(部品表)の全材料をチェックする
- 証明書がない材料を「赤色(非原産)」に塗りつぶす(これが保守的アプローチです)
- 間接材料や輸送用梱包材をリストから「除外」する(計算を有利にします)
- 残った材料費(赤色)の合計を出し、FOB価格と比較する
- 不合格の場合のみ、サプライヤーに「原産品申告書」を依頼し、赤色を「青色(原産)」に書き換えていく