VA(付加価値基準)の徹底理解

1. VA基準の基本:金額で「日本製」を証明する

CTC(HSコード変更基準)が「数字の変化」を見るのに対し、VA基準は「いくら日本で価値を加えたか」という金額の割合で判定します。

  • 基本の考え方: 製品のFOB価格に占める付加価値(日本で行われた加工費・労務費・利益など)の割合が、協定で定められた基準(例:40%以上)を満たしていれば、原産品と認められます。
  • メリット: 加工はすごいのにHSコードが変わらない製品(化学品や精密機器など)を救済できます。

2. 計算方法は2種類(控除法がメイン)

基本的には「控除法」がシンプルでよく使われます。

① 控除法(Build-Down Method)

製品価格(FOB)から、海外材料の値段を引き算する方法です。

式:[(FOB価格 - 非原産材料の価額) / FOB価格] × 100

  • メリット: 自分の会社の「利益」や「加工費」を直接明かさなくて良いため、多くの企業が採用しています。

② 積算法(Build-Up Method)

日本でかかったコスト(材料費+労務費+経費)を足し算していく方法です。

式:(原産材料 + 製造原価) / FOB価格 × 100

メリット: 海外材料の比率が高くても、日本での加工が非常に手間がかかっている場合に有利です。

比較項目控除法(Build-Down)積算法(Build-Up)
計算の焦点「いくら海外から買ったか」「いくら国内でかけたか」
外部要因への耐性弱い(材料費・為替の影響を直に受ける)強い(自社の労務費等は為替に左右されない)
秘匿性高い(利益や加工費を明かさなくて良い)低い(詳細な原価構成の開示が必要)

3. 為替・価格変動という「見えないリスク」

VA基準を採用する際、最も注意すべきは以下の3つの変動要素です。

① 為替レートの罠(円安リスク)

海外から材料(VNM)をドル建てで輸入している場合、円安が進むと日本円ベースの材料費が膨らみます。

  • 例: 10ドルの部品
    • 110円/ドルの時:1,100円
    • 150円/ドルの時:1,500円
  • 結果: 分子の「非原産材料価額」が大きくなるため、付加価値率(RVC)が低下し、昨日まで合格だった製品が今日から判定落ちするリスクがあります。

② 原材料費の高騰

市況により非原産材料(鋼材、樹脂、半導体など)の価格が上がると、加工内容は同じでも原産地割合は低下します。

③ FOB価格(売価)の下落

得意先からの値下げ要求や、キャンペーンでの単価ダウンによりFOB価格が下がると、分母が小さくなるため、これも付加価値率を押し下げる要因になります。

4. VNM(非原産材料の価額)の決定時期

「いつの時点の価格を使うか」も重要です。

  • 輸入時: CIF価格(日本に到着した時の価格)
  • 購入時: 日本国内で非原産品を購入した場合は、その「購入価格」
  • 判定時: 判定を行う日の為替レートではなく、原則として「実際にその材料を仕入れた時(または在庫評価)」の帳簿上の価格を使用します。

5. 按分計算の「継続性」というルール

労務費や経費を按分する場合、税関や経済産業省から最もチェックされるのは「計算の合理性」と「継続性」です。

  • NG例: 今月は判定を通したいから「作業時間比」で計算し、来月は「生産数量比」に変える。
  • 実務のポイント: 一度採用した按分基準は、経営実態に大きな変化がない限り継続して使用してください。これを「一貫性のある会計慣行」と呼びます。

6. リスク回避のための「安全マージン」の設定

実務上、VA基準で判定を維持するためには、計算上の数値に余裕を持たせることが推奨されます。

  • 基準が40%の場合: 自己判定で45%〜50%は確保しておく。
  • マージンが削られたら:
    1. 海外材料の国内調達化(サプライヤー証明の取得)
    2. 製造工程の見直しによる国内付加価値の向上
    3. CTC基準への切り替え再検討

まとめ:VA基準を「守る」ための3箇条

  1. 定期的な再試算: 為替が大きく動いた時は、過去の判定結果が有効か再確認する。
  2. 根拠資料のセット保管: 計算シートだけでなく、その根拠となった「インボイス」や「按分表」を必ずセットで保存する。
  3. CTCとの併用: 可能であれば、為替に左右されないCTC基準で判定できないか、まず徹底的に粘る。