1. 第三者証明制度(商工会議所発給方式)

対象協定

  • 日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)
  • 日インドEPA
  • 日中韓FTAなど、主に比較的古い世代のEPA

制度の特徴

商工会議所などの第三者機関が原産性を審査し、「特定原産地証明書(Form)」を発給する方式です。公的機関の関与により信頼性が高い一方、時間とコストがかかります。


【実務ポイント1】発給までのスケジュール管理

タイムライン設計の重要性

標準的な所要期間:

  • 初回企業登録: 約2〜4週間
  • 判定依頼から判定結果通知: 3〜10営業日
  • 証明書発給申請から発給: 即日〜3営業日

実務上の注意点:

【ケーススタディ】
輸出予定日:4月30日
→ 遅くとも4月中旬には判定依頼を完了
→ 初回取引なら3月中旬から準備開始が理想

スケジュール管理のポイント:

  1. 初回取引は余裕を持つ
    • 企業登録、担当者ID取得、品目登録を含めると最低1ヶ月必要
    • 書類不備での差し戻しリスクを考慮し、1.5ヶ月見ておくと安全
  2. 判定依頼のタイミング
    • 契約成立後すぐに判定依頼を開始
    • 「船積み前発給」が原則のため、BL日前に証明書が必要
    • 遡及発給は原則不可(一部協定で例外あり)
  3. 書類準備のチェックリスト
    • 仕入書(インボイス)
    • 原材料一覧表
    • 製造工程フロー図
    • 非原産材料の輸入申告書または仕入書
    • HSコード分類根拠資料

【実務ポイント2】コスト構造の理解

発生するコスト項目

1. 直接コスト

  • 企業登録料: 無料(多くの商工会議所)
  • 判定手数料: インボイス1行につき500円(20回目以降は50円)
  • 証明書発給手数料: 1,100円〜2,200円/件

2. 間接コスト(見落としがち)

  • 資料作成・収集の人件費
  • 原材料メーカーへの問い合わせコスト
  • 翻訳費用(外国語資料の場合)
  • システム利用料(JASTPRO等)

コスト削減の実務テクニック:

✅ 判定の有効活用

  • 一度判定を取得すれば、同一品目・同一バイヤーなら繰り返し使用可能
  • 定期輸出品は初回コストのみで継続利用できる

✅ 類似品目のグルーピング

  • 原材料構成が同じ製品は一括判定依頼でコスト圧縮
  • 例:サイズ違い、色違いの製品

✅ 年間計画の策定

  • 年間輸出計画に基づき、まとめて判定依頼することで効率化
  • 商工会議所との関係構築で相談コスト削減

ROI計算の重要性

【試算例】
輸出額:1,000万円
関税率差:10%(EPA適用で0%)
→ 削減関税:100万円

判定費用:1万円
証明書発給費用(年間12回):2.4万円
人件費:10万円
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総コスト:12.4万円
純メリット:87.6万円

年間複数回の輸出があれば、初期コストは十分回収可能です。


【実務での失敗事例と対策】

失敗事例1:船積み後の証明書申請 → 対策:輸出スケジュールを商工会議所と共有し、逆算して準備

失敗事例2:原材料情報の不足 → 対策:サプライヤーに事前にEPA対応可否を確認し、原産国証明を入手

失敗事例3:HSコードの誤分類 → 対策:通関士資格保持者または専門家への事前相談