PSR(品目別原産地規則)の徹底攻略:EPA活用の核心を理解する

PSRとは何か?

PSR(Product Specific Rules:品目別原産地規則) は、EPA特恵関税を受けるために、各商品(HSコードごと)が満たすべき条件を定めたルールです。

簡単に言えば、「この商品は本当にこの国で作られたと言えるのか?」を判定する基準です。

なぜPSRが必要なのか?

EPAで関税をゼロにするには、輸出国の「原産品」である必要があります。しかし、現代の製造業では:

  • 部品を複数の国から調達
  • 複数の国で加工
  • 最終組立だけを輸出国で実施

このような状況で、「どこまでやれば原産品と認められるか?」を明確にするのがPSRです。

実務のポイント: PSRを満たさなければ、どんなに手続きが完璧でもEPA税率は適用されません。

PSRの3つの基本パターン

PSRには主に以下の3つの基準があり、商品によって使い分けられます。

関税分類変更基準CTC非原産材料のHSコードが変更される
付加価値基準VA/RVC一定割合以上の付加価値を付ける
加工工程基準SP特定の製造工程を実施する

多くの場合、これらは「または」で結ばれており、いずれか一つを満たせばOKです。

PSR判定の実務フロー

ステップ1:該当するPSRを確認

1. 製品のHSコード(6桁)を特定
2. EPA協定のPSR(品目別規則)を参照
3. その商品に適用される基準を確認
   - CTC基準のみ?
   - VA基準のみ?
   - CTC or VA?(選択可能)
   - 加工工程基準?

ステップ2:使用する基準を選択

複数の基準が「または」で規定されている場合、最もクリアしやすい基準を選びます。

判断基準:

  • 自社の材料管理レベル
  • 原価計算システムの有無
  • サプライヤーの協力度
  • 証明書類の準備コスト

ステップ3:判定作業の実施

選んだ基準に沿って判定:

CTC基準の場合:

  1. BOM(部品表)作成
  2. 各材料の原産性判定
  3. 非原産材料のHSコード特定
  4. CTCの成否判定

VA基準の場合:

  1. 控除法 or 積算法を選択
  2. 必要なデータ収集(材料費、労務費等)
  3. RVC計算
  4. 基準値クリアの確認

加工工程基準の場合:

  1. 製造工程図作成
  2. 要求される工程の実施確認
  3. 証拠書類の整備

ステップ4:証明書類の整備

判定結果を証明する書類を準備:

  • 原産品判定書(社内文書)
  • 計算根拠資料
  • サプライヤー証明書
  • 製造工程証明書

ステップ5:定期的な見直し

以下の場合、再判定が必要:

  • 材料の調達先変更
  • 製造工程の変更
  • 材料価格の大幅変動(VA基準の場合)
  • HSコードの改正

PSR判定でよくある失敗例

失敗例1:「ほぼ国産だから大丈夫」という思い込み

ケース: 国内で90%加工しているが、重要な基幹部品が非原産。CTCもVAも満たせず。

教訓: 「加工度」と「PSR充足」は別物。客観的な判定が必須。

失敗例2:サプライヤー証明を取らない

ケース: 国内調達の材料を全て「原産」と思い込み。実際は輸入品だった。

教訓: 国内調達でも原産性確認は必須。サプライヤー証明を取得すべき。

失敗例3:VA計算の按分ミス

ケース: 複数製品の労務費を適当に按分。税関検査で指摘。

教訓: 按分基準は合理的根拠が必要。一貫性も重要。

失敗例4:製造工程の記録不足

ケース: 加工工程基準が必要だが、作業記録がない。口頭説明のみ。

教訓: 「やった」ことと「証明できる」ことは別。記録整備が必須。

失敗例5:HSコードの誤り

ケース: 製品のHSコードを間違えたため、参照したPSRが誤り。

教訋: すべての判定の前提はHSコード。ここを間違えると全てが無駄に。


まとめ:PSR攻略の5つの鉄則

鉄則1:基準の選択は慎重に

CTC、VA、SPのどれを使うか、自社の状況に合わせて最適なものを選ぶ。

鉄則2:証拠書類は同時並行で準備

判定作業と同時に、証明書類も整備する。後回しにしない。

鉄則3:サプライヤーを巻き込む

原産品申告書の取得など、サプライヤーの協力が不可欠。

鉄則4:記録を残す文化を作る

製造記録、作業日報、検査記録など、日常的な記録が証拠になる。

鉄則5:専門家の活用を恐れない

複雑な案件や判断に迷う場合、早めに専門家に相談する。


実践チェックリスト

PSR判定を行う際、以下を確認してください:

  •  製品のHSコード(6桁)を正確に特定した
  •  該当するEPA協定のPSRを確認した
  •  適用可能な基準(CTC/VA/SP)を把握した
  •  最も有利な基準を選択した
  •  BOMまたは原価計算データを準備した
  •  非原産材料を正確にリストアップした
  •  計算結果が基準値をクリアした
  •  証拠書類を整備した
  •  定期見直しの仕組みを作った

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