輸入申告の全体フロー:NACCSを通じた税関とのやり取り

1. NACCS(ナックス)とは何か?

NACCS (Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System) は、税関、フォワーダー、通関業者、銀行、保税蔵置場などを一本のネットワークで結ぶ「貿易の神経系」です。

  • リアルタイム管理: 船がどこにいるか、検査が始まったか、税金が払われたかなどのステータスが、関係者全員に瞬時に共有されます。
  • 迅速な審査: 審査に問題がなければ、申告ボタンを押してから数秒で「輸入許可」が出ることもあります。

2. 輸入申告から許可までの具体的ステップ

実務では以下のフローで「IDA(輸入申告)」という業務コードを軸に進みます。

  1. 申告書類の準備:通関業者は、輸入者から受け取った「3種の神器(Invoice, P/L, B/L)」に基づき、HSコードの特定と税額計算を行います。
  2. 輸入申告の送信(IDA):NACCSを通じて税関に申告データを送信します。この瞬間、システムによって「自動的に」審査区分が割り振られます。
  3. 審査区分の決定(区分1・2・3):貨物のリスクに応じて、税関がどのような審査を行うか決まります(詳細は後述)。
  4. 納税(関税・消費税):税金の支払いが確認されると(または担保がある場合は猶予)、システム上で「輸入許可」へと進みます。
  5. 輸入許可(Import Permit):「輸入許可通知書」が発行されます。これで貨物は晴れて日本国内を自由に動かせるようになります。

3. 実務担当者が一喜一憂する「審査区分」の正体

NACCSに申告データを送ると、即座に以下のいずれかの「区分」が回答されます。

審査区分内容所要時間(目安)
区分1(即時許可)システムによる自動審査のみ。数秒〜数分
区分2(書類審査)税関職員がインボイス等の書類をチェックする。数時間〜1日
区分3(貨物検査)実際にコンテナを開け、現品と書類が一致するか確認する。1日〜3日

【実務のポイント】

初めて輸入する品目や、EPAを適用する申告、またはランダムな抽出によって「区分2」や「区分3」になります。特に「区分3」になると、X線検査場への移動費用や作業費など、数万円の追加コストが発生します。


4. 経営者が知るべき「通関のコンプライアンス」

税関は、すべての貨物を細かくチェックすることはできません。そのため、**「輸入者の自主申告」**を尊重する性善説に基づいた運用がなされています。

  • 事後調査のリスク: 通関時に検査がなかったからといって「お墨付き」を得たわけではありません。税関は輸入許可の数年後に会社を訪問し、過去の申告が正しかったかチェックする**「事後調査」**を行います。
  • EPA適用の責任: EPAを適用して関税をゼロにする場合、その原産性の証明責任は輸入者にあります。もし不備があれば、数年分に遡って関税を追徴されるリスクがあります。

5. 【トレードビズの視点】EPA活用のためのNACCS操作

EPAを適用する際は、NACCSの入力画面で特定の「原産地証明書識別符号」や「協定コード」を入力します。

  • このコードひとつで関税率が「通常率(5%)」から「EPA率(0%)」へと切り替わります。
  • 逆に、この入力を忘れると、後から修正(更正の請求)をするのは非常に手間がかかるため、通関業者への指示が極めて重要です。

まとめ:通関は「許可」が出て終わりではない

輸入許可通知書は、その貨物が適法に輸入されたことを証明する公的書類です。これは**「7年間の保存義務」**があります。

迅速な通関(スピード)と、正しい申告(コンプライアンス)。この両輪を回すために、正確な書類準備とNACCSの仕組みへの理解が欠かせません。