海外サプライヤーとの交渉は、単なる値切り合いではなく、「互いのリスクとコストをどう分担するか」を調整する作業です。口約束で終わらせず、書面(LOI)に残すことが、後の契約トラブルを防ぐ最大の防御策となります。

1. 経営者が交渉すべき「5つの重要項目」
単価(Unit Price)以外に、必ず以下の4点をセットで交渉してください。
- MOQ(最低発注数量):
- 初回は市場テストのため、相手の規定枚数・個数よりも少なく設定できないか。
- リードタイム(納期):
- 注文から出荷(ETD)まで何日かかるか。繁忙期の遅延リスクはどう管理されているか。
- インコタームズ(第1-1章):
- FOBなのかCIFなのか。これによって自社が負担する運賃や保険料が変わるため、原価に直結します。
- 支払条件(Payment Terms):
- 「30%前払い / 70%船積み後払い」など。最初から100%前払いはキャッシュフローとリスクの観点から避けるのが理想です。
【経営のヒント:Landed Cost(着地原価)で考える】 商品代金が10%安くなっても、送料や関税を含めた「最終原価」が予算を超えては意味がありません。交渉時は常に「日本に届いた時の価格」を頭に置いておきましょう。
2. 実務担当者のための「MOQ(最小ロット)引き下げ」交渉術
「小規模から始めたいが、相手のロットが大きすぎる」という悩みは非常に多いです。以下の3つのアプローチを試してみてください。
- 「テストマーケティング」を強調する:
- 「今回は日本の市場調査のため。結果が良ければ、次からは正規ロットで発注する」と約束する。
- サンプル費用(割増金)を提案する:
- 「MOQ以下で受けてくれるなら、単価を10%上乗せして払う」と提案。在庫リスクを負うより安く済む場合が多いです。
- 既存の生産ラインに相乗りする:
- 「他社の注文がある時に、ついでに作ってくれないか?」と打診し、工場の稼働効率を逆手に取ります。

3. 基本合意書(LOI:Letter of Intent)の役割
本契約(Sales Contract)を結ぶ前に、交渉した主要な条件を1〜2枚の書面にまとめたものがLOIです。
- 意向の表明:
- 「当社はあなたと取引する意思がある」という真剣度を伝えます。
- 言った言わないの防止:
- 複雑な貿易用語が絡む交渉において、互いの認識にズレがないかを確認するフィルターになります。
- 法的拘束力:
- 一般的にLOI自体に強い法的拘束力はありませんが、「守秘義務(NDA)」や「独占交渉権」などの条項を含めることで、本契約までの安全性を高めます。

4. LOIに盛り込むべきチェックリスト
- [ ] 対象製品の仕様と予定単価
- [ ] 暫定的な発注時期と数量
- [ ] 採用するインコタームズ(例:FOB Shanghai)
- [ ] 支払い方法の概意(例:T/T remittance)
- [ ] サンプル確認のプロセス
- [ ] 有効期限(この条件でいつまで合意するか)
5. 「誠実さ」という最強のカード
海外のサプライヤーも人間です。「このバイヤーと組めば日本市場で成功できそうだ」と思わせることが、最高の条件を引き出すコツです。
- 自社の強みをプレゼンする:
- 日本での販売チャネル、過去の実績、商品へのこだわりを熱心に伝えます。
- 無理な要求はしない:
- 相手の利益を削りすぎると、隠れた場所での「手抜き(品質低下)」を招きます。適正な利益を相手に保証しつつ、自社のリスクを最小化するのがプロの交渉です。

まとめ:交渉のゴールは「信頼の可視化」
条件がまとまり、LOIを交わしたら、いよいよ「サンプルチェック(第0-4章予定)」へと進みます。 「交渉で決めたことが、実際の製品に反映されるか」を確認する、最も緊張感のあるフェーズです。

