HSコード特定と関税率:事前教示制度の賢い使い方

HSコード(商品の分類番号)は、世界共通の「商品の背番号」です。世界150カ国以上で同じルールに基づき分類されていますが、実はその特定(分類)こそが、貿易実務で最も専門性が問われる難所です。


1. 経営者が知るべき「HSコード」の重み

HSコードが決まると、以下の3つが自動的に確定します。

  1. 関税率: 0%(無税)から数十%まで、利益率を直接左右します。
  2. EPAの適用可否: 協定ごとに「このHSコードなら原産地規則を満たせば関税ゼロ」と決まっています。
  3. 輸入他法令の要否: 1-2章で解説した「食品衛生法」などの規制対象かどうかが、HSコードで紐付けられています。

【経営リスク】 HSコードを誤って低い税率で申告し、後の「事後調査」で間違いを指摘されると、不足分の関税だけでなく、過少申告加算税(10〜15%)や延滞税が課されます。


2. 実務担当者のための「HSコード特定」3つのステップ

HSコードは上から順に「類(2桁)」「項(4桁)」「号(6桁)」と細かくなります。

ステップ1:商品の「属性」を徹底的に把握する

カタログだけでなく、以下の情報が必要です。

  • 材質: 何でできているか?(例:鉄製か、プラスチック製か)
  • 機能・用途: 何に使うものか?(例:台所用品か、産業機械の部品か)
  • 加工度: 組み立て済みか、未完成品か。

ステップ2:「実行関税率表」を引く

税関のウェブサイトにある「実行関税率表」を参照します。「通則(解釈のルール)」に従い、もっとも適切な番号を探します。

【実務のコツ】 迷ったときは、同じような商品の過去の申告事例や、税関の「品目分類事例集」を検索するのが近道です。

ステップ3:EPA税率を確認する

HSコードが決まったら、協定ごとの「EPA税率(特恵税率)」を確認します。

  • MFN税率: 一般的な税率(EPAを使わない場合)
  • EPA税率: 協定国からの輸入で、原産地証明がある場合の優遇税率

3. 最強のリスク回避術:事前教示制度(Advance Ruling)

「この商品はHSコード Aなのか Bなのか、判断に迷う」という場合に、税関から公式な回答(お墨付き)をもらう制度です。

事前教示を使う3つのメリット

  1. 輸入申告時の即時許可: 税関の「お墨付き」があるため、通関審査が非常にスムーズになります。
  2. 事後調査での否認リスクゼロ: 公式回答に従って申告している限り、後から「コードが違う」と追徴課税されることはありません。
  3. 原価計算の確定: 契約前に税率が確定するため、正確な利益予測が立てられます。

利用時の注意点(賢い使い分け)

  • 文書による照会(公式): 回答まで約1ヶ月かかりますが、3年間有効な法的効力があります。内容は税関HPで公開されるため、競合他社に商品スペックを知られたくない場合は工夫が必要です。
  • 口頭による照会(非公式): 電話や窓口で気軽に聞けます。法的効力はありませんが、数日で回答が得られるため、急ぎの案件に向いています。

4. 【トレードビズの視点】HSコード変更リスクへの備え

世界的なHSコードの改訂(5年ごとのHS品目別表の改正)や、日本の関税改正により、昨日まで有効だったコードが今日から変わることがあります。

  • 定期的な見直し: 継続して輸入している商品でも、1年に1回は最新の関税率表と照らし合わせる「棚卸し」が必要です。

まとめ:正しいHSコードは「最良の節税」

「とりあえず通関業者にお任せ」にするのではなく、輸入者自らが商品の特性を伝え、根拠を持ってHSコードを特定すること。これが、無駄な税金を払わず、かつ罰則リスクから会社を守る唯一の方法です。