HSコード特定の極意:初心者でもわかる実践ガイド

HSコードとは何か?

HSコード(Harmonized System Code) は、世界共通の商品分類コードです。輸出入される全ての商品に、6桁(国際基準)から10桁(日本の場合)の数字が割り当てられています。

このコードは「貿易の共通言語」とも呼ばれ、関税率の決定、EPA(経済連携協定)の適用、貿易統計の作成など、あらゆる場面で使用されます。

例えば:

  • コーヒー豆:0901.11
  • ノートパソコン:8471.30
  • 綿のTシャツ:6109.10

なぜHSコード特定が重要なのか?

HSコードを間違えると、以下のような問題が発生します:

1. 関税の誤適用

本来5%の関税で済むはずが、間違ったコードで10%を支払ってしまう

2. EPA特恵関税が使えない

関税をゼロにできるチャンスを逃してしまう

3. 通関トラブル

税関で止められ、出荷が遅れる

4. 事後調査でのペナルティ

後から税関調査が入り、追徴課税や罰金のリスク

HSコード特定の基本ステップ

ステップ1:商品を正確に理解する

まず、あなたが扱う商品について、以下を明確にします:

  • 材質:何でできているか?(金属、プラスチック、繊維など)
  • 用途:何に使うものか?
  • 機能:どのように動作するか?
  • 構造:どんな部品で構成されているか?

例:スマートフォンケース

  • 材質:シリコン製
  • 用途:スマートフォン保護
  • 機能:衝撃吸収
  • 構造:一体成型

ステップ2:HSコード表を読み解く

HSコードは「類」→「項」→「号」という階層構造になっています。

桁数名称内容
上2桁類 (Chapter)全97類の大まかな分類
上4桁項 (Heading)より詳細な品目
上6桁号 (Subheading)世界共通の分類
HSコード表の構造

ステップ3:類注・号注を必ず確認

これが最も見落とされるポイントです!

HSコード表には、各類や項の冒頭に「注」があります。これは分類のルールを定めたもので、必ず読む必要があります

例:第39類(プラスチック)の類注

  • 「他の類に特掲されるものを除く」という規定がある
  • つまり、プラスチック製でも、特定用途なら別の類になる可能性

ステップ4:通則を理解する

HSコードには6つの「通則」(分類のルール)があります。

最重要の通則3: 複数の類や項に該当しそうな場合、以下の優先順位で決定:

  1. より具体的に記載されているもの
  2. 商品の本質的な特性を与えるもの
  3. 番号が後のもの

実務での判断ポイント

ポイント1:「部分品」の扱い

機械の部品は、その機械の類に分類されることが多い。

例:

  • 自動車のエンジン → 第84類(機械)ではなく第87類(自動車)
  • ただし汎用部品は除く

ポイント2:「セット商品」の判定

複数の商品が組み合わさっている場合:

  • 小売用セット:セットとして分類
  • 単なる同梱:それぞれ別々に分類

例:コーヒーメーカー+コーヒー豆のギフトセット → 主要な特性を与える「コーヒーメーカー」で分類

ポイント3:「材質」vs「用途」

多くの場合、用途が優先されます。

例:プラスチック製の椅子

  • 第39類(プラスチック製品)×
  • 第94類(家具)◯

ポイント4:「完成品」vs「未完成品」

基本的に未完成品は完成品と同じコードになります。

ただし、「部分品」「素材」レベルなら別コード。

HSコード特定のための便利ツール

1. 税関の実行関税率表

日本の輸入公式ツール。最も信頼性が高い。

2. 輸出統計品目表

輸出統計品目表

No Description

輸出の場合はこちらを参照。

比較項目輸入統計品目表(実行関税率表)輸出統計品目表
用途輸入輸出
主な目的関税・消費税の徴収、輸入制限の管理貿易統計の作成、輸出管理(戦略物資など)
税率の記載あり(基本、暫定、特恵、EPAなど)なし(日本の輸出に輸出税はないため)
桁数9桁(または10桁)9桁
更新頻度頻繁(税率改正やEPA発効による)年1回程度(主に1月1日)
二つの統計表の違い

3. 事前教示制度

税関に正式に照会できる制度。回答には法的拘束力がある。

所要期間: 通常30日程度 費用: 無料

事前教示制度について

【概要】 この制度は …

4. 品目分類事例データベース

過去の税関判断事例を検索できる。

輸入貨物の品目分類事例

調製食料品、飲料、アルコール、食酢、たばこ及び製造たばこ代用品、非燃焼吸引用の物品(ニコチンを含有するかしないかを問わない。)並びにニコチンを含有するその他の物 品(ニコチンを人体に摂取するためのものに限る。) (第16類〜第24類)

よくある間違いパターン

間違い1:「見た目」だけで判断

NG例: 「金属製だから第72類だ」 正解: 用途や機能も考慮する

間違い2:類注を読まない

NG例: 該当しそうな号をすぐに選ぶ 正解: まず類注・号注で除外規定を確認

間違い3:一つの資料だけで決定

NG例: ネット情報だけで確定 正解: 複数の資料で裏取り、不明なら事前教示

間違い4:過去の事例を盲信

NG例: 「前回これで通ったから」 正解: 商品仕様が変われば分類も変わる

EPA活用のためのHSコード管理

EPA特恵関税を使うには、HSコードが正確であることが大前提です。

EPA利用時の追加ポイント:

  1. 6桁レベルでの確認
    • EPA税率は通常、6桁のHSコードで規定
  2. 品目別規則(PSR)の確認
    • HSコードごとに原産地規則が異なる
  3. 自社製品のHSコードリスト作成
    • 定期的な見直し体制の構築

実践チェックリスト

HSコードを特定する際、以下をチェックしてください:

  •  商品の材質、用途、機能を明確に説明できる
  •  該当しそうな「類」を3つ程度ピックアップした
  •  その類の「類注」を読んだ
  •  該当する「項」の「号注」を読んだ
  •  通則3(複数該当時)を検討した
  •  実行関税率表で税率を確認した
  •  必要に応じて事前教示を検討した

まとめ:HSコード特定の極意

HSコード特定は、「商品を深く理解すること」から始まります。

5つの極意:

  1. 商品の本質を見抜く – 材質より用途が優先されることが多い
  2. 類注・号注は必読 – これを読まないと始まらない
  3. 通則を味方につける – 迷った時の判断基準
  4. 事例を参考に、盲信せず – 最終判断は自社商品で
  5. 不明な場合は専門家に相談 – 事前教示制度を活用

最後に: HSコード特定は「慣れ」も重要です。最初は時間がかかっても、数をこなすうちに判断スピードが上がります。ただし、新商品や複雑な商品は、必ず慎重に確認してください。


EPA活用コンサルティングのご案内

HSコード特定からEPA活用まで、10年以上の実務経験を活かして、御社のコスト削減をサポートいたします。

  • 中小企業診断士
  • 通関士
  • EPA実務経験10年以上

まずは無料相談から: [お問い合わせはこちら]