信用調査(Due Diligence):騙されないためのセルフチェック

「ホームページが立派だから」「担当者が親切だから」という理由は、信用調査においては何の根拠にもなりません。特に高額な取引を始める前には、以下の多角的なチェックリストを用いて、相手の正体を暴く必要があります。


1. 「Google Maps」によるバーチャル工場見学

最も手軽で強力なツールがGoogle Maps(または中国ならBaidu Maps)のストリートビューと航空写真です。

  • 住所の照合: 相手が提示してきた住所を検索し、そこに「本当に工場らしい建物」があるか確認します。
  • 看板の確認: ストリートビューで工場の入り口が見えるなら、社名の看板が出ているかチェックします。
  • 矛盾の発見: 「大規模な自社工場を保有」と言いながら、検索結果が雑居ビルの一室や、ただの空き地である場合、その業者は「工場のふりをしたペーパーカンパニー」である可能性が極めて高いです。

2. ドキュメントの「整合性」を疑う

相手から送られてきた証明書(PDF)が、Photoshopなどで加工された偽造品でないかを確認します。

  • ビジネスライセンス(営業執筆):
    • 記載されている「社名」「代表者」「所在地」が、アリババの登録情報やWebサイトの記載と1文字も違わず一致しているか。
  • 銀行口座名(Beneficiary Name):
    • ここが最大のチェックポイントです。送金先の口座名が「個人名」であったり、「全く別の社名」であったりする場合、詐欺のリスクが非常に高いです。必ず「ライセンス上の社名」と一致していることを求めます。
  • 認証の有効期限:
    • ISO9001やBSCIなどの証明書には、必ず有効期限があります。期限切れのものを平気で送ってくる業者は、管理体制が杜撰である証拠です。

3. 「サードパーティ(第三者)」の評価を活用する

自社だけの判断が不安な場合は、客観的な評価指標を参考にします。

  • D-U-N-S Number(ダンズナンバー):
    • 世界的な企業識別番号です。これを持っている企業は、一定の社会的信用があると言えます。
  • アリババの「Audit Report」:
    • Verified Supplierであれば、第三者検査機関(SGSやTÜV等)による詳細な調査レポートがダウンロードできます。ここにある「従業員数」「主要設備」「年間売上」の数字は、業者による自称よりもはるかに信頼できます。
  • ブラックリスト検索:
    • 「[会社名] + scam」や「[会社名] + complaint」でグローバルに検索をかけます。過去にトラブルを起こした業者は、海外の掲示板で実名が挙がっていることがよくあります。

4. 【実務マニュアル】ビデオ通話で「今、工場を見せて」と頼む

メールやチャットのやり取りだけでは、相手がどこにいるか分かりません。

  • 抜き打ちビデオ会議:
    • ZoomやWeChat、WhatsAppなどで「今すぐ、工場内を少し歩いて見せてくれないか?」と頼みます。
  • チェック項目:
    • 担当者が戸惑ったり、「今日は休みだ」「カメラが壊れている」と拒否したりする場合は要注意です。本物の工場であれば、生産ラインや在庫の様子を喜んで見せてくれるはずです。

5. 経営判断:信用調査のコストを惜しまない

数千万単位の大きなプロジェクトであれば、数万円を払って**「現地の調査会社」**に訪問調査を依頼するのも賢い経営判断です。

  • 物理的な確認: 実際に人が行き、稼働しているか、従業員の雰囲気はどうかを見ることに勝る調査はありません。
  • トレードビズの視点: 信用調査は「相手を疑うこと」ではなく、「持続可能なパートナーシップを築くための最低限の礼儀」です。ここで不誠実さが露呈する業者は、たとえ価格が安くても、後から品質クレームや納期遅延で何倍もの損失を会社にもたらします。

まとめ:違和感があれば「NO」と言う勇気

「なんとなく返信が遅い」「質問をはぐらかす」「支払先を急に変更してきた」。こうした小さな違和感は、貿易事故の予兆です。信用調査で少しでも不審な点があれば、どれだけ魅力的な商品であっても、取引を思いとどまる決断力が必要です。