国際貿易では、税関や銀行は「モノ」を直接見ることができません。すべては「書類」に記載された情報に基づいて判断されます。そのため、インボイス(送り状)、パッキングリスト(梱包明細)、B/L(船荷証券)の3つの数字や内容が「1円、1kg、1文字」の狂いもなく一致していることが大前提となります。
1. 商業送り状(Commercial Invoice)
「代金の請求書」であり「税関への申告書」の基礎
インボイスは、輸出者が作成する最も重要な書類です。輸入原価の決定や関税額の計算根拠となります。
インボイス記載項目一覧
① 【作成日】
作成年月日を記載します(出荷日を併記する場合あり)。国際取引に準じた日付表記を用い、日本固有のフォーマットは避けてください。
② 【インボイス番号】
管理・照会が可能な任意の番号を記載します。
③【 輸出者(Shipper)】
輸出者の社名、住所、連絡先を記載します。
④ 【輸入者・配送先(Consignee)】 輸入者の情報を記載します。配送先が異なる場合は、別途「Ship to」として配送先情報を明記します。
⑤【 輸送手段・方法 輸送形態】
(船・航空等)、便名、出発予定日を記載します。
⑥ 【輸送ルート】
積出港、揚地港、経由地などの情報を記載します。
⑦ 【支払条件(Terms of Payment)】
決済方法(T/T送金、L/C等)を明記します。
⑧ 【取引条件(Incoterms)】
費用負担やリスク移転の範囲を示すインコタームズを記載します。
⑨ 【品名・種類】
具体的な製品名および、内容が判別できる一般名詞を記載します。
⑩ 【数量】
品目ごとの数量および単位を記載します。
⑪ 【単価・金額】
品目ごとの単価と金額を、通貨単位(USD等)を添えて明記します。
⑫【 合計金額】
品目合計に、保険料や手数料等の諸費用を加算した総額を記載します。
⑬ 【シッピングマーク】
荷役用の識別マークや梱包番号を記載します。
⑭ 【原産国】 各品目の原産国を記載します。仕向国により原産地証明書が必要な場合があります。⑮ 署名 発行責任者の署名を行います。必要に応じて直筆署名(肉筆)で対応します。
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【EPAの重要メモ】
EPAを適用する場合、インボイスに特定の申告文(原産地申告文)を記載することで、原産地証明書に代えることができる協定(日EUなど)があります。
2. 梱包明細書(Packing List)
「貨物の容姿」を示す仕様書(=納品書)
インボイスが「お金」の書類なら、パッキングリストは「モノの量・形」の書類です。税関が検査を行う際のガイドマップになります。
- チェックポイント:
- Net Weight(純重量): 商品そのものの重さ。
- Gross Weight(総重量): 梱包材(パレットや段ボール)を含めた全体の重さ。
- Measurement(容積): 貨物の体積(M3:立方メートル)。運賃計算の基礎。
- Case Mark(荷印): 外装に貼られたマークや番号。これと書類が一致しないと、税関検査で「現品相違」とみなされます。


3. 船荷証券(Bill of Lading / B/L)
「貨物の引換券」であり「所有権を証明する有価証券」
三種の神器の中で最も複雑で、かつ法的効力が強いのがB/Lです。船会社(またはフォワーダー)が、貨物を受け取った証拠として発行します。
- B/Lの3つの性格:
- 受取証: 船会社が貨物を預かった証明。
- 運送契約書: 目的地まで運ぶ約束。
- 権利証券: これを持っている人が貨物の所有者(荷受人)。

経営者が知っておくべき「B/Lの種類とスピード」
実務では、貨物の到着スピードに合わせ、以下のいずれかの形態を選択します。
| 種類 | 特徴 | メリット・デメリット |
| Original B/L | 3枚1組の原本。裏面にサインして裏書き譲渡可能。 | 【安全】 決済が済むまで原本を渡さないことで代金回収を確実にできるが、書類の郵送に時間がかかる。 |
| Surrendered B/L | 「元地回収」済みB/L。原本の回収を省略。 | 【迅速】 船会社へ「原本不要」と指示したもの。メールやFAXのコピーで貨物が引き取れる。 |
| Sea Waybill | そもそも有価証券ではない「海上運送状」。 | 【最速】 貨物の所有権を争わない(親子会社間など)場合に最適。書類の到着を待たずに引き取り可能。 |
4. 【実務マニュアル】不備を防ぐ「クロスチェック」のやり方
書類が届いたら、以下の「横串(よこぐし)の確認」を必ず行ってください。
- 数量の連動: インボイスの総個数 = パッキングリストの総個数 = B/Lの数量。
- 重量の連動: パッキングリストのGross Weight = B/LのGross Weight。
- 表記の一致: 荷受人(Consignee)の社名や住所にスペルミスはないか?(1文字でも違うと銀行や船会社に拒絶される場合があります)。
まとめ:書類の乱れは「コスト」の乱れ
書類に不備(ディスクレ)があると、船会社への訂正費用(L/G費用)や、港での滞留費用が発生します。特にEPAを活用する場合、書類上の品名と判定資料の整合性は厳しくチェックされます。
「たかが書類」と思わず、「書類=貨物そのもの」という意識を社内で共有することが、トラブルフリーな貿易の第一歩です。
