貿易実務の重要知識:基本合意書(LOI)と売買契約書の違いとは?

1. LOI(基本合意書)と契約書の比較表

まずは、両者の違いを一目で確認しましょう。

項目基本合意書(LOI / MOU)売買契約書(Sales Contract)
タイミング交渉の途中・最終段階(婚約)交渉完了・発注時(婚姻届)
目的主要条件の確認、真剣度の証明権利と義務の確定、紛争解決
法的拘束力原則なし(※一部を除く)あり(強力な証拠能力)
内容の具体性大枠(ターゲットプライス等)詳細(品質、納期、紛争解決地等)
位置づけプロセスを前進させる道標最終的な法的ルールブック

2. LOI(Letter of Intent:意向表明書)とは?

LOIは、本格的な契約を結ぶ前に、「現時点で双方が合意している内容」を確認するための書類です。

なぜLOIを交わすのか?

  • 「言った言わない」の防止: 長引く交渉の中で、合意済みの条件が後からひっくり返されるのを防ぎます。
  • 本気度の証明: 「私たちは本気で御社と契約するつもりがある」という意思を示し、工場の製造ラインを確保させる等の有利な立場を作ります。
  • 独占交渉権の確保: 「本契約までの間、他社とは交渉しないでほしい」という特約を入れることがあります。

【注意】法的拘束力が「ある」部分

原則として法的拘束力はありませんが、以下の条項についてはLOIであっても法的義務が生じるように記載するのが一般的です。

  • 機密保持(NDA): 交渉中に知った情報の漏洩禁止。
  • 独占交渉権: 他社との同時並行交渉の禁止。
  • 有効期限: このLOIがいつまで有効か。

3. 売買契約書(Sales Contract)とは?

交渉が全て完了し、実際にモノと金を動かす際の「最終決定事項」です。

なぜ契約書が不可欠なのか?

  • トラブル解決の基準: 「不良品が3%混じっていたらどうするか?」「船が遅延したら誰が責任を負うか?」といったリスクに対する回答が全て書かれています。
  • 法的な強制力: 相手が契約に違反した場合、裁判や仲裁においてこの書類が最大の武器となります。

4. 中小企業の使い分け術

実務においては、取引の規模や性質によって使い分けます。

ケースA:1688.comやAlibabaでの小口輸入

  • 判断: LOIは不要。注文書(P/O)とインボイスで対応。
  • 理由:スピード重視であり、プラットフォーム上のチャット履歴が一定の証拠能力を持つため、重い書類を交わすコストを省きます。

ケースB:独自商品のOEM開発や大型設備投資

  • 判断: LOIを挟んでから、本契約へ。
  • 理由:金型費用や開発期間がかかるため、まずLOIで「独占交渉権」や「ターゲットプライス」を固め、リスクを段階的に管理する必要があります。

5. まとめ:どちらも「曖昧さ」を排除するための道具

貿易は、言葉も文化も異なる相手との取引です。

  • LOIは、交渉を円滑に進めるための「中間報告書」。
  • 売買契約書は、万が一の時に自社を守るための「盾」。

この違いを理解し、現在の取引状況に最適な書類を選択することが、安全な輸入ビジネスへの第一歩となります。