EPA(経済連携協定)を活用して関税削減メリットを享受するには、適切な原産地証明の取得が不可欠です。しかし、協定によって証明方式が異なり、それぞれに固有の実務上の留意点があります。本記事では、中小企業が特に注意すべき「第三者証明制度」と「自己申告制度」の実務ポイントを解説します。
1. 第三者証明制度(商工会議所発給方式)
対象協定
- 日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)
- 日インドEPA
- 日中韓FTAなど、主に比較的古い世代のEPA
制度の特徴
商工会議所などの第三者機関が原産性を審査し、「特定原産地証明書(Form)」を発給する方式です。公的機関の関与により信頼性が高い一方、時間とコストがかかります。

2. 自己申告制度(認定輸出者・輸出者自己申告)
対象協定
- CPTPP(TPP11)
- 日EU・EPA
- 日英EPA
- RCEP(地域的な包括的経済連携協定)
- 日米貿易協定など、新世代EPA
制度の特徴
輸出者または生産者が自ら原産性を判断し、インボイスや申告書に原産地申告文を記載する方式です。迅速性と柔軟性が高い一方、自己責任が重くなります。

3. 証明方式の選択基準
どちらを選ぶべきか?
| 判断基準 | 第三者証明 | 自己申告 |
|---|---|---|
| 適している企業 | EPA初心者、輸出頻度が低い | 定期輸出、EPA慣れている |
| コスト | 手数料発生 | 直接費用なし(人件費のみ) |
| スピード | 数日〜数週間 | 即時(自己判断) |
| 責任 | 商工会議所が審査 | 全責任は輸出者 |
| 柔軟性 | 低い(事前承認必要) | 高い(随時対応可) |
| 検認リスク | 低い(第三者保証あり) | 高い(自己責任) |
ハイブリッド戦略
実務では、協定と取引形態に応じて使い分けるのが最適です:
【推奨戦略】
・日ASEAN、日インド → 第三者証明(制度上必須)
・CPTPP、日EU、RCEP → 自己申告
├ 定期取引・大口 → 包括自己申告
└ スポット・少額 → 個別自己申告
4. 検認対策:書類保管の実務
どちらの方式でも、輸出後の検認対応が重要です。
保管義務期間
- 日本側: 輸出日から5年間
- 一部協定: 3年間
保管すべき書類
必須書類:
- 原産地証明書または申告文記載のInvoice
- 原産性を証明する書類
- BOM(部品表)
- 製造工程フロー
- 原材料の購入Invoice、輸入申告書
- 原産国証明書(サプライヤー発行)
- 輸出関連書類
- Packing List
- B/L、AWB
- 契約書
保管形態:
- 電子データ保管可(協定により異なる)
- 案件ごとにフォルダ管理
- 検索性の確保(Invoice No.、PO No.で検索可能に)
5. まとめ:成功するEPA活用のために
第三者証明のポイント再確認
✅ スケジュール管理:逆算思考で余裕を持った準備
✅ コスト意識:ROIを試算し、継続的なメリットを可視化
✅ 商工会議所との連携:不明点は早期に相談
自己申告のポイント再確認
✅ 申告文の正確性:協定ごとのフォーマットを厳守
✅ 署名権限の明確化:社内規程と権限委任の文書化
✅ 原産性判断の確実性:専門知識の習得と社内体制整備
専門家活用の重要性
EPA実務は複雑で、誤れば関税追徴や取引先との信頼喪失につながります。特に:
- 初回導入時
- 新協定発効時
- 複雑な製品(多数の原材料使用)
- 検認通知を受けた時
こうした場合は、通関士やEPAコンサルタントの活用をお勧めします。