物流コストには、運賃のように「最初から分かっている費用」と、トラブルによって「後から請求される費用」があります。後者の代表がデマレージとディテンションです。

1. 2つの滞留費用の違い(デマレージ vs ディテンション)
これらは混同されやすいですが、「貨物がどこにあるか」によって呼び名が変わります。
| 費用名 | 発生場所 | 発生する理由 |
| デマレージ (Demurrage) | 港(コンテナヤード内) | 輸入許可が遅れた、またはトラックの手配ができず、コンテナを引き取れない。 |
| ディテンション (Detention) | 港の外(自社倉庫など) | コンテナを引き取った後、空コンテナを期限内に港へ返却できない。 |
2. コストの爆発:累進課税方式の恐怖
これらの費用の最大の特徴は、「時間が経つほど、1日あたりの単価が跳ね上がる」という点です。船会社によって異なりますが、一般的な計算イメージを紹介します。
【計算例】デマレージの推移(40ftコンテナの場合)
※最初の7日間は「フリータイム(無料期間)」と仮定
- 1〜7日目: 0円(フリータイム)
- 8〜11日目: 15,000円/日 → 計 60,000円
- 12〜15日目: 30,000円/日 → 計 120,000円
- 16日目以降: 50,000円/日 → 毎日5万円ずつ加算!

【経営リスク】
税関検査や書類不備で2週間足止めを食らうだけで、コンテナ1本につき20万円近い「想定外のコスト」が発生します。これが5本あれば、100万円の損失です。
3. なぜ発生するのか? 5つの主な原因
実務の現場では、以下のような「ボタンの掛け違い」から発生します。
- 書類の到着遅延: 船は着いたのに、原本B/Lが国際郵便で届かない。
- EPA判定の遅れ: 輸入申告直前に「原産地の証明が足りない」ことが判明し、確認に時間がかかる。
- 他法令の検査: 食品衛生法などの検査で「不合格」や「再検査」になり、保税地域から動かせない。
- 配送トラック(ドレージ)不足: 繁忙期でトラックが捕まらず、コンテナを引き取れない。
- 資金不足: 関税・消費税の納税資金が準備できず、輸入許可が下りない。

4. 損失を防ぐための「防衛策」
① 「フリータイム」を事前に交渉する
フォワーダーを通じて、船会社にフリータイムの延長(エクステンション)を交渉できます。
- 通常7日のところを14日に延ばしてもらうことで、万が一の検査時にも余裕が持てます。
② B/Lのサレンダード化・Waybill化
原本の郵送を待つリスクを避けるため、第2章-1で解説した「Surrendered B/L」や「Sea Waybill」を活用し、ペーパーレスで引き取れる体制を整えます。
③ EPAの事前教示と事前判定
船が日本に着いてから「この書類で大丈夫かな?」と悩むのは手遅れです。「積送基準」や「原産性」の確認は、現地を出港する前に完了させておくのが鉄則です。
5. 実務担当者のための「コスト計算シート」項目例
管理表に以下の項目を設けて、常に「デッドライン」を可視化しましょう。
- ETA(入港予定日): Free Time End(デマレージ無料期限): Current Location(貨物の現在地): * Alert: 期限まであと2日になったら赤字で表示
まとめ:デマレージは「管理不足の罰金」である
経営の視点で見れば、デマレージは物流業者への正当な対価ではなく、*プロセスの停滞に対するペナルティ」です。この費用が頻発しているなら、それは物流ルートや事務フローのどこかに欠陥があるサインです。
