フェーズ5は「改善・強化」です。ここまで調達・在庫・物流・計画を一通り見てきましたが、いざ自社を改善しようとすると「どこから手をつければいいのか分からない」という壁にぶつかります。その答えはいつも同じです——まず見えるようにすること(可視化)から始めます。
この記事では、何を・どうやって可視化すればよいか、そして高価なツールがなくても始められる現実的な進め方を解説します。
「見えないもの」は改善できない
改善の鉄則は、「測れないものは管理できない」という言葉に集約されます。在庫がどれだけあるか、リードタイムが何日か、予測がどれだけ外れたか——これらが数字として見えていなければ、どこに問題があるのかを判断できず、改善のしようがありません。
逆に言えば、可視化するだけで問題の半分は解決に向かいます。「なんとなく在庫が多い気がする」が「Aランク商品の在庫が2か月分も眠っている」と数字で見えた瞬間、打つべき手が具体的になるからです。可視化は改善の前提であり、最初の一歩です。
💡 ポイント
可視化のゴールは「きれいなグラフを作ること」ではありません。異常や問題に早く気づくことです。見た目より、「いつもと違う」がひと目で分かるかどうかを重視しましょう。
まず何を可視化するか──4つの基本指標
あれもこれも測ろうとすると挫折します。中小企業がまず押さえたいのは、次の4つです。いずれもこれまでの記事で登場した、サプライチェーンの健康状態を表す指標です。
| 指標 | 何が分かるか | 関連記事 |
|---|---|---|
| 在庫金額・在庫回転率 | 現金がどれだけ眠っているか | 05・06 |
| リードタイム | 発注から納品までの時間とばらつき | 09 |
| 予測と実績のズレ | 需要予測の精度と傾向 | 10 |
| 欠品率・納期遵守率 | 顧客への供給がどれだけ安定しているか | 05・07 |
これらを一度に全部そろえる必要はありません。自社で最も気になっているもの——たとえば資金繰りが課題なら在庫金額から——1つだけ選んで測り始めるのが正解です。1つが回り出したら、次を足していけばよいのです。
📊 関連ツール
在庫金額を正しく可視化するには、仕入れ時の正確な原価が必要です。海外調達品なら ランデッドコスト計算機 で関税・送料込みの総コストを把握し、それを在庫評価の基礎にしましょう。
高価なツールは不要──エクセルから始める
「可視化=専用システムの導入」と考える必要はありません。多くの中小企業にとって、最初の可視化はエクセルや表計算ソフトで十分です。月末の在庫金額を毎月記録してグラフにするだけでも、推移という立派な可視化になります。
大切なのはツールの高機能さではなく、同じ指標を、同じ方法で、定期的に記録し続けることです。毎月同じ形で並べるからこそ、「先月より増えた」「いつもと違う」という変化に気づけます。システム導入はその先、エクセルでの管理が手に負えなくなってから検討すれば十分です(次の記事で扱います)。
⚠️ 注意
可視化の最大の落とし穴は、「グラフを作って満足し、見るだけで終わる」ことです。指標は行動につなげて初めて価値が出ます。「この数字がこうなったら、こう動く」という判断の基準とセットで運用しましょう。
この記事のまとめ
- 「測れないものは管理できない」。改善はすべて可視化から始まる。
- 可視化のゴールはきれいなグラフではなく、異常に早く気づくこと。
- まず押さえる4指標:在庫金額・回転率/リードタイム/予測と実績のズレ/欠品率・納期遵守率。
- 全部やらず、最も気になる1つから測り始める。
- 最初はエクセルで十分。同じ指標を定期的に記録し続けることが肝心。
- 見るだけで終わらせず、行動の基準とセットで運用する。
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エクセルでの可視化が手に負えなくなってきたら、次はいよいよシステムの出番です。次回は「ERPとSCMの関係」を取り上げ、ツール導入で失敗しないための考え方を解説します。
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13. デジタル化・ERPとSCMの関係
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