発注点・安全在庫を自分で計算する

電卓と書類で発注量を計算する実務の様子

入門編では「発注点=リードタイム中に売れる量+安全在庫」という考え方を紹介しました。この実践編では、その数字を実際に自分の手で出せるようになることを目標にします。式は1つだけ。順番に分解すれば、勘に頼っていた発注タイミングを誰でも再現できる数字に置き換えられます。

具体的な数値例を追いながら、4つの入力(需要・ばらつき・リードタイム・サービスレベル)の集め方まで解説します。


使う式は2本だけ

必要な式は次の2本です。難しく見えますが、後で1つずつ分解します。

🧮 基本の2式
① 安全在庫 = Z × σ × √リードタイム
② 発注点 = 平均日次需要 × リードタイム + 安全在庫

σ(シグマ)は「日次販売数のばらつき」、Zは「サービスレベルから決まる係数」です。

4つの入力をそろえる

① 平均日次需要(1日に何個売れるか)

直近1〜3か月の販売数を日数で割るだけです。例:過去90日で900個売れたなら、平均日次需要は10個。季節商品は、対象とする時期の実績を使うのがコツです。

② 需要のばらつき σ(標準偏差)

ここが多くの人のつまずきどころです。σは「日によって売れ行きがどれだけブレるか」を表す数字で、過去の日次販売データから計算します。手計算は手間なので、後述のツールに販売データを貼り付ければ自動で出ますが、考え方だけ押さえておきましょう。

  • 毎日ほぼ同じ数が売れる → σは小さい → 安全在庫は薄くてよい
  • 日によって大きく上下する → σは大きい → 安全在庫を厚くする必要がある

💡 σが分からないときの目安
データがすぐ出せない場合、ひとまず平均日次需要の20〜40%をσの仮値として始め、後で実データに置き換える進め方でも構いません。読みにくい商品ほど高め(40%)に設定します。

③ リードタイム(発注〜入荷の日数)

仕入れ先からの標準納期です。過去の発注履歴から、実際に何日かかっているかを確認しましょう。「カタログ上は5日だが実際は平均7日」というズレはよくあります。

④ サービスレベル → Z 係数

サービスレベルは「欠品させない確率」をどこに置くかの目標値です。これを統計の係数Zに変換します。主要な対応は次の通りです。

サービスレベル90%95%97%98%99%
Z係数1.281.651.882.052.33

高いほど欠品しにくくなりますが、安全在庫(=寝かせる現金)も増えます。主力商品(ABC分析のAランク)は高め、代替がきく商品は低めに設定するのが定石です。

販売データから安全在庫を算出するイメージ

実際に計算してみる

次の条件で計算してみましょう。

  • 平均日次需要:10個/日
  • 需要のばらつき σ:3個
  • リードタイム:7日
  • サービスレベル:95%(Z=1.65)

ステップ1:安全在庫
安全在庫 = Z × σ × √リードタイム = 1.65 × 3 × √7 = 1.65 × 3 × 2.65 = 約13個

ステップ2:発注点
発注点 = 平均日次需要 × リードタイム + 安全在庫 = 10 × 7 + 13 = 83個

つまり「在庫が83個まで減ったら発注をかける」が答えです。70個(=リードタイム中に売れる分)はその間に売れる平均量、13個(安全在庫)は想定外のブレへの備え、という内訳になっています。

⚠️ リードタイムもブレる場合
仕入れ先の納期自体が「早いと5日、遅いと11日」のようにブレる場合は、安全在庫の式に項が1つ加わります(√の中にリードタイムのばらつきが入る)。手計算は煩雑なので、下のツールの「リードタイムもばらつく」をオンにして算出するのが確実です。

ツールで一気に出す

考え方を理解したら、日々の計算はツールに任せましょう。販売データを貼り付ければσも自動で算出され、発注点・安全在庫がその場で出ます。在庫の動き方もグラフで確認できます。

🧮 無料ツール
発注点・安全在庫 計算機:この記事の計算をそのまま実行できます。販売データの自動集計、サービスレベルの切替、リードタイム変動にも対応。


この記事のまとめ

  • 使う式は2本:安全在庫 = Z×σ×√LT発注点 = 日次需要×LT+安全在庫
  • 4つの入力:平均日次需要・σ(ばらつき)・リードタイム・サービスレベル(→Z)。
  • σは過去の日次データから算出。分からなければ平均の20〜40%で仮置き。
  • サービスレベルが高いほど安全在庫は増える。主力商品は高め、代替品は低めに。
  • リードタイムもブレる場合は式が変わるので、ツールで算出するのが確実。

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