月次補充計画の実務

月次でまとめて補充する倉庫の在庫管理

前回の発注点方式は「在庫を常に見ていて、減ったら発注する」やり方でした。しかし実務では、月末などの決まったタイミングでまとめて発注する会社も多いはずです。これが定期発注方式(Order-up-to)。この実践編では、その目標在庫と発注量を自分で出せるようにします。

結論から言うと、考え方は「目標在庫まで足りない分を補充する」だけ。ただし目標在庫の組み立てに、つまずきやすいポイントが2つあります。


基本の考え方:目標在庫まで補充する

定期発注方式は、シンプルな引き算です。

🧮 発注量の基本式
発注量 = 目標在庫 −(手持ち在庫 + 発注残)

「目標在庫」まで足りない分を、毎回のレビュー時に補充するだけです。

ポイントは引く側に「発注残(すでに発注済みでまだ届いていない分=輸送中の在庫)」も含めること。これを忘れて手持ちだけで判断すると、二重に発注してしまいます。

つまずき①:目標在庫は3つの層でできている

では肝心の「目標在庫」はどう決めるか。これは次の3層の足し算です。

カバーするもの計算
① 翌月販売分次のレビューまでに売れる量翌月見込み
② リードタイム中の販売分発注してから届くまでに売れる量日次需要 × リードタイム
③ 安全在庫①②の期間中の需要のブレZ × σ × √(発注間隔+LT)

多くの人が①だけ(翌月分+安全在庫)で考えてしまいますが、②のリードタイム分が抜けると、入荷を待つ間に在庫が尽きます。守るべき期間は「翌月」だけでなく「翌月+リードタイム」だからです。

💡 短納期なら近似できる
リードタイムが翌日〜数日と短ければ、②の層はごく小さくなり、実質「目標在庫 ≒ 翌月販売 + 安全在庫」で運用できます。②を意識すべきは、海外調達などリードタイムが月次サイクルに対して無視できない場合です。

つまずき②:リードタイム分は「相殺」される

ここがいちばん混乱しやすい点です。「目標在庫に②のリードタイム分を積むのに、発注量にも影響しないの?」という疑問が出ます。答えは——発注残を差し引くことで、リードタイム分は発注量から自然に相殺される、です。

毎月定期的に発注していると、常に「輸送中の在庫(パイプライン)」が流れています。目標在庫にはリードタイム分を積みますが、発注量の式で発注残を引くと、そのパイプライン分が打ち消し合う。だから目標在庫が正しく組めていれば、発注量は結果的に「売れた分を補充する」量に落ち着きます。これが「パイプラインで吸収される」の正体です。

目標在庫と発注量を計算するイメージ

実際に計算してみる

次の条件で計算します。

  • 翌月の販売見込み:120個(需要予測ツールで算出)
  • 需要のばらつき σ:14個
  • 発注間隔 R:1か月、リードタイム:7日(=約0.23か月)
  • サービスレベル:95%(Z=1.65)
  • 現在の手持ち:60個、発注残:30個

ステップ1:3層を出す
① 翌月販売分 = 120個
② リードタイム中 = 120 × 0.23 = 約28個
③ 安全在庫 = 1.65 × 14 × √(1+0.23) = 約26個

ステップ2:目標在庫
目標在庫 = 120 + 28 + 26 = 174個

ステップ3:発注量
発注量 = 174 −(手持ち60 + 発注残30)= 84個

「今月は84個発注する」が答えです。翌月の見込みが変われば目標在庫も動くので、毎月同じ数にはなりません。繁忙期は目標が上がり、閑散期は下がる——これが正しい姿です。

⚠️ 急変月は機械任せにしない
目標在庫を需要見込みに連動させると、見込みのブレがそのまま発注のブレに増幅されることがあります(ブルウィップ効果)。新商品の立ち上げや需要の急変が見込まれる月は、計算値を鵜呑みにせず、S&OPの場で人の判断を加えましょう。

ツールで一気に出す

3層の計算と発注量の引き算は、ツールに任せれば一瞬です。販売実績からσも自動算出され、目標在庫の構成と必要な補充量がグラフで確認できます。

🧮 無料ツール
月次補充計画ツール:この記事の計算をそのまま実行。翌月見込みは 需要予測ツール で出した値を入れると、予測から発注量まで一気通貫です。


この記事のまとめ

  • 定期発注は「発注量 = 目標在庫 −(手持ち+発注残)」のシンプルな引き算。
  • 目標在庫は3層:翌月販売 + リードタイム中の販売 + 安全在庫
  • 短納期ならリードタイム層は小さく、「翌月販売+安全在庫」に近似できる。
  • リードタイム分は発注残を引くことで相殺される(パイプラインで吸収)。
  • 目標在庫は需要見込みに連動して毎月変わる。急変月は人の判断を加える。

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