在庫KPIで異常を見つける

在庫KPIを測って過剰在庫を見つける倉庫

実践シリーズの最終回は、ここまで設計してきた発注・在庫の仕組みが「うまく回っているか」を確かめる方法です。入門編で「改善は可視化から」と学びました。この実践編では、在庫KPIを実際に計算して、眠っている在庫=改善すべき箇所を見つけるところまでやります。

主役は「在庫回転率」と「在庫回転日数」。難しい指標ではありません。割り算2回で、どの商品が現金を寝かせているかが見えてきます。


在庫回転率と回転日数

在庫回転率は「1年で在庫が何回入れ替わったか」を表します。回転が速いほど、在庫が現金として早く戻ってきている=健全、ということです。

🧮 2つの式
在庫回転率(回/年)= 年間出荷額 ÷ 平均在庫額
在庫回転日数(日)= 365 ÷ 在庫回転率

回転日数は「平均すると在庫が何日分、棚にとどまっているか」。直感的なのでこちらをよく使います。

たとえば年間出荷額2,400万円・平均在庫額200万円なら、回転率は12回/年、回転日数は約30日。「平均30日で在庫が一巡している」と読めます。逆に回転日数が長い商品は、それだけ長く現金を在庫の形で寝かせているサインです。

「全体」だけ見ても異常は見つからない

ここが実務の落とし穴です。会社全体の回転率だけを見ていると、健全な主力商品が、眠っている不良在庫を覆い隠してしまいます。平均すると問題なく見えても、中身を開けると一部の商品に在庫が偏っている——これはよくあることです。

だから、回転率は商品ごと(あるいはカテゴリごと)に出して、回転日数の長い順に並べるのが鉄則です。リストの上位に並んだ商品が、過剰在庫の候補。ここから改善が始まります。

💡 ABC分析と組み合わせる
「回転日数が長い × 在庫金額が大きい」商品が、最優先の見直し対象です。ABC分析のAランクで回転が悪い商品があれば、真っ先に手を打つべきサイン。2つの指標を掛け合わせると、優先順位がはっきりします。

商品別の在庫回転を分析する

異常を見つけた後にやること

回転日数の長い商品を特定したら、原因を切り分けて手を打ちます。

考えられる原因打ち手
発注しすぎ(ロット過大)発注量を見直す(EOQの再計算)
安全在庫が過剰サービスレベル・σを見直す
需要が落ちている予測を更新し、発注を絞る
売れ筋でなくなった値下げ・販促で在庫処分を検討

ここで、これまでの実践ツールがつながります。発注しすぎならEOQ計算機発注点計算機で発注設計を見直し、需要が落ちているなら需要予測ツールで見込みを更新する。在庫KPIは、どのツールで手を打つべきかを教えてくれる「入口」の役割です。

⚠️ 回転が悪い=悪、ではない例外
回転日数が長くても、欠品が許されない保守部品や、意図的に持つ戦略在庫は別です。KPIはあくまで「異常の候補」を見つける物差し。最後は商品の性質を加味して判断します。

ツールで一気に出す

商品ごとの回転率・回転日数の計算と、過剰在庫候補のあぶり出しは、ツールに任せましょう。商品名・年間出荷額・平均在庫額を貼り付ければ、回転日数の長い順に並べ、目標を超える商品を自動でフラグします。

📊 無料ツール
在庫KPIツール:商品別の回転率・回転日数を自動計算し、過剰在庫候補をフラグ。改善の入口として使ってください。


この記事のまとめ

  • 在庫回転率 = 年間出荷額 ÷ 平均在庫額回転日数 = 365 ÷ 回転率
  • 回転日数が長い=現金を長く寝かせているサイン。
  • 全体平均では異常は隠れる。商品ごとに出して回転日数の長い順に並べる
  • 「回転が悪い × 金額が大きい」がABC分析と合わせた最優先の見直し対象。
  • 原因(発注過大・安全在庫過剰・需要減)に応じて、EOQ・発注点・予測ツールで手を打つ。
  • 保守部品や戦略在庫は例外。最後は商品の性質で判断。

実践シリーズ・完結にあたって

全6回、おつかれさまでした。発注点・安全在庫、月次補充、ABC分析、EOQ、需要予測、そして在庫KPI——入門編の「考え方」を、すべて自分の数字で計算できる実務スキルに変えてきました。共通していたのは「勘を、誰でも再現できる数字に置き換える」という一点です。

まずは在庫KPIで自社の「眠っている在庫」を見つけることから始めてみてください。改善すべき1商品が見つかれば、あとは対応するツールで手を打つだけです。

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