発注点や月次補充で「いつ・いくつ手元に必要か」は決まりました。残る問いは「1回にまとめてどれだけ発注すれば一番得か」です。少量を頻繁に発注すれば手間(発注コスト)がかさみ、大量にまとめれば在庫を抱える負担(保管コスト)が増える。この綱引きの最適点が、EOQ(経済的発注量)です。
この実践編では、EOQを実際に計算し、現場でどう使う(あるいは使わない)かまで解説します。
2つのコストの綱引き
発注ロットを決めるとき、相反する2つのコストが働きます。
- 発注コスト:発注事務・輸送の固定費・受入検品など、1回の発注ごとにかかる費用。まとめて発注する(回数を減らす)ほど安くなる。
- 保管コスト:倉庫代・金利・保険・陳腐化など、在庫を抱えることで生じる費用。1回の発注量が多い(在庫が増える)ほど高くなる。
この2つの合計が最小になる発注量がEOQです。グラフにすると、発注コストは右下がり、保管コストは右上がり、合計はU字を描き、その底がEOQになります。
🧮 EOQの式
EOQ = √(2 × D × S ÷ H)
D=年間需要、S=1回あたりの発注コスト、H=1個を1年間持つ保管コスト。Hは「単価 × 保管コスト率」で出すのが実務的です。
入力をそろえる
- D(年間需要):1年間に売れる総数。月◯個なら×12。
- S(発注コスト):1回の発注で発生する固定費。商品代金そのものは含めない。
- H(保管コスト):単価 × 年間保管コスト率。率は倉庫・金利・陳腐化を合わせて年15〜30%が目安。
💡 保管コスト率の考え方
「在庫を1年持つと、その商品の価値の何%が余分なコストになるか」です。倉庫家賃や保険だけでなく、その分の現金を寝かせる機会損失(金利)や、流行遅れ・劣化による価値減(陳腐化)も含めます。だから単なる倉庫代より大きくなります。
実際に計算してみる
次の条件で計算します。
- 年間需要 D:12,000個
- 1回あたりの発注コスト S:8,000円
- 単価:2,000円、年間保管コスト率:20% → H = 2,000 × 20% = 400円/個・年
EOQ = √(2 × 12,000 × 8,000 ÷ 400) = √480,000 = 約693個
つまり「1回に約690個ずつ、年に約17回(12,000÷693)発注する」のが、発注コストと保管コストの合計が最小になる発注の仕方、という答えです。
📊 EOQでは2つのコストが釣り合う
EOQの発注量では、年間の発注コストと年間の保管コストがほぼ一致します。「発注の手間」と「在庫の負担」がちょうど均衡する点、と覚えると直感的です。
EOQの「正しい使い方」と限界
EOQは強力ですが、いくつか前提と限界があります。ここを理解して使うことが実務では重要です。
- 前提:需要が年間を通じて一定、発注・保管コストも一定。季節変動が大きい商品にはそのままでは当てはまりにくい。
- 丸めてよい:コスト曲線は最小点付近がゆるやかなので、693個を仕入れ先のケース単位や最小ロットに合わせて700個に丸めても、コストはほとんど変わりません。1個単位の精度は不要です。
- 役割分担:EOQは「どれだけ発注するか」、発注点は「いつ発注するか」。両者はセットで使ってこそ発注設計が完成します。
⚠️ EOQが効く場面・効かない場面
発注コストが大きい(輸入で1回の手配が重い等)商品ほど、EOQでまとめ発注する効果が出ます。逆に、発注がほぼ無料に近い・需要が読めない・陳腐化が速い商品では、EOQに固執せず必要な分だけ細かく発注するほうが合理的です。
ツールで一気に出す
計算と、コスト曲線での確認はツールが速いです。年間需要・発注コスト・単価・保管コスト率を入れれば、EOQ・発注回数・発注サイクル・年間コストが一度に出ます。
🧮 無料ツール
EOQ計算機:この記事の計算をそのまま実行し、コスト曲線で最適点を可視化できます。
この記事のまとめ
- EOQは発注コスト(まとめるほど↓)と保管コスト(増えるほど↑)の合計が最小になる発注量。
- 式は EOQ = √(2DS÷H)。Hは「単価 × 保管コスト率(年15〜30%目安)」。
- 保管コスト率には倉庫代だけでなく金利・陳腐化も含める。
- EOQでは発注コストと保管コストがほぼ釣り合う。
- 最小点付近はゆるやかなので、ロット単位に丸めてOK。需要変動が大きい・陳腐化が速い商品には固執しない。
- EOQ=どれだけ/発注点=いつ。セットで使う。
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