「すべての商品を同じ熱量で管理しようとして、結局どれも中途半端」——在庫管理でよくある状態です。これを防ぐのがABC分析でした。この実践編では、入門編で紹介したABC分析を実際の手順に沿って自分でやってみることを目標にします。
必要なのは商品ごとの金額データだけ。4ステップで、限られた管理の手間をどこに集中させるべきかが見えてきます。
ABC分析の4ステップ
手順はシンプルです。エクセルでも、後述のツールでも同じ流れです。
- データを集める:商品ごとの「年間金額」を用意する。
- 金額の大きい順に並べる。
- 累積構成比を出す:上から金額を足していき、全体に占める割合を計算する。
- 境界で区切る:累積80%までをA、95%までをB、残りをCに分類する。
💡 「金額」に何を使うか
目的によって使う数字を変えます。資金繰りを見たいなら在庫評価額、売上貢献を見たいなら年間売上、出荷の手間を見たいなら年間出荷額。まずは「年間売上」で始めるのが分かりやすいです。
実際にやってみる
8商品の年間売上を例に分類してみましょう。すでに金額の大きい順に並べ、累積構成比まで計算した表が次です。
| 順位 | 商品 | 年間金額(万円) | 構成比 | 累積構成比 | ランク |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 商品A | 240 | 34% | 34% | A |
| 2 | 商品B | 185 | 26% | 60% | A |
| 3 | 商品C | 130 | 18% | 78% | A |
| 4 | 商品D | 72 | 10% | 88% | B |
| 5 | 商品E | 40 | 6% | 94% | B |
| 6 | 商品F | 23 | 3% | 97% | C |
| 7 | 商品G | 14 | 2% | 99% | C |
| 8 | 商品H | 6 | 1% | 100% | C |
結果を読み解くと、上位3商品(A)だけで金額の78%を占めています。8商品のうちわずか3つに、売上の大半が集中しているわけです。一方、下位3商品(C)は合わせても全体の6%にすぎません。これがABC分析の典型的な姿——「少数の重要商品」と「多数の些少な商品」がはっきり分かれます。
📊 境界は調整してよい
80%・95%は代表的な目安にすぎません。商品数が少ない、特定商品への集中が極端、といった場合は 70%・90% など自社の実態に合わせて調整します。大切なのは数字の厳密さより、「手厚く管理する一群」を切り出せることです。
分類した「後」が本番──ランク別の管理
ABC分析は分類して終わりではありません。むしろ、ランクごとに管理の仕方を変えることが目的です。同じ手間を全商品にかけるのをやめ、Aに力を集中させます。
| ランク | 管理方針 | 発注・在庫 |
|---|---|---|
| A | 手厚く・精密に | 発注点と安全在庫を計算で設計。サービスレベル高め。頻繁に見直す。 |
| B | 標準的に | 決めたルールで運用。定期的に点検。 |
| C | 手間をかけすぎない | 発注をまとめる・在庫を薄く。多少の欠品は許容。 |
たとえばAランクの商品には、前回の実践編で学んだ発注点・安全在庫の計算をしっかり適用します。逆にCランクに同じ手間をかけるのは非効率。年に数回まとめて発注する程度で十分です。限られた時間を、成果に直結するAに振り向ける——これがABC分析の実利です。
⚠️ 金額だけで切らない例外
金額が小さくても、欠品が即トラブルになる商品(機械の保守部品など)はCに落とさず、別途重要度を上げて管理します。ABC分析はあくまで出発点で、最後は商品の性質を加味して判断します。
ツールで自動分類する
商品数が多いと手作業の並べ替え・累積計算は大変です。商品名と金額を貼り付ければ、並べ替え・累積構成比・分類・パレート図まで自動で出るツールを用意しています。
📊 無料ツール
ABC分析ツール:在庫管理表をそのまま貼り付けてA/B/C分類とパレート図を自動作成。境界(80%/95%)も調整できます。
この記事のまとめ
- 手順は4ステップ:集める→並べる→累積構成比→境界で区切る。
- 「金額」は目的で使い分け。まずは年間売上で始める。
- 典型的には少数のAが金額の大半を占める。
- 境界(80%/95%)は自社に合わせて調整してよい。
- 分類後が本番。Aは精密に、Cは手間をかけすぎないとメリハリをつける。
- 金額が小さくても欠品厳禁の商品は例外的に重要度を上げる。
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