EPAのルールの中で、加工工程基準(SP基準)はもっとも直感的なルールです。 「材料の価格」や「HSコード」ではなく、「その国で、指定された特定の作業を行ったか?」というプロセスの内容が重視されます。
例えるなら、「どこの国の材料を使ってもいいけれど、最後は必ず『熟成』という工程をこの国でやりなさい」という、こだわりのレシピ指定のようなものです。

1. 加工工程基準が使われる代表的な3つの業界
このルールは、単純な組み立てではなく、性質がガラリと変わる工程が必要な製品によく使われます。
① 化学品(変化の証明)
「混ぜるだけ」ではなく、化学的な変化が求められます。
- 求められること: 化学反応(AとBをくっつけてCにする)、精製(不純物を取り除く)など。
- 実務のコツ: 「何度で、どのくらい圧力をかけて、どの触媒を使ったか」という実験ノートのような記録が必要です。

② 繊維・衣類(カタチの証明)
「布」を「服」に変える工程が重視されます。
- 求められること: 裁断(布を切る)と縫製(縫い合わせる)。
- 実務のコツ: 日本の自社工場でミシンを踏んだ記録や、型紙に沿って切った証拠が重要になります。

③ 食品(調理の証明)
「ただの粉」を「パンや麺」に変えるような工程です。
- 求められること: 調理、混合、加熱など。
- 実務のコツ: 加熱温度や、材料を混ぜる比率がレシピ(配合表)通りであることを証明します。

2. 必須アイテム:製造工程図(フローチャート)の書き方
加工工程基準を証明する最強の武器は、「誰が見ても作業がイメージできる工程図」です。以下の4点をセットで書き込みます。
- 工程名: 何をしたか(例:蒸留、縫製、加熱)
- 使用材料: 何を入れたか(原産・非原産の区別を忘れずに!)
- 作業条件: 温度・時間・圧力など(「しっかり」ではなく「180℃で3時間」と数値で)
- 使用設備: どの機械を使ったか(機械の名前や型番)

3. 製造工程図のサンプル
【ケースA:化学品の例】
製品名:有機化合物A
- 原料投入: 原料X(非原産)100kg + 触媒Z 1kg
- 化学反応: 反応器R-102にて180℃・5気圧で3時間反応(縮合反応)
- 精製: 蒸留塔D-101にて減圧蒸留を実施
- 検査: 純度98%以上を確認 ➡ 結論: 国内で特定の化学反応と精製を行ったため「日本原産」
【ケースB:衣類の例】
製品名:Tシャツ
- 裁断: 自動裁断機AC-200にて、型紙通りに生地をカット(実施:日本国内工場)
- 縫製: 工業用ミシンにて、肩・袖・裾を縫い合わせる(実施:日本国内工場)
- 仕上げ: プレス機にてシワ伸ばし、検品 ➡ 結論: 国内で「裁断・縫製」の主要工程を行ったため「日本原産」
4. 失敗しないための「証拠資料」リスト
工程図を書くだけでは不十分です。「本当にその通りにやった?」と聞かれたときのために、以下の書類をセットで保管しておきましょう。
分析証明書・品質検査書: 出来上がった製品が、狙い通りの品質であることを示すデータ。
作業日報・製造記録: 「〇月〇日に、この機械でこの設定で作りました」という現場の生データ。
設備リスト: その工程を行うための機械が、実際に工場にあることを証明するリスト。

