SCORモデル入門──Plan/Source/Make/Deliver/Return

データを分析しサプライチェーンを可視化するイメージ

前回、SCMとは「モノ・お金・情報の流れを1本につなぐこと」だと解説しました。とはいえ、いざ自社のサプライチェーンを見直そうとすると、どこから手をつければいいか分からないものです。そこで役立つのが、世界中の企業が共通の「地図」として使っているSCORモデルです。

この記事では、SCORモデルの5つのプロセスを入門レベルで解説します。難しい指標の話は抜きにして、「自社をこの5つに当てはめてみる」ところから始めましょう。


SCORモデルとは──サプライチェーンの「共通言語」

SCOR(スコア)モデルは、Supply Chain Operations Reference の略で、世界最大のSCM専門機関であるASCM(旧APICS)が策定・管理している国際的なフレームワークです。サプライチェーンの活動を誰が見ても同じように整理できるよう、いくつかの基本プロセスに分解しているのが特徴です。

難しく考える必要はありません。要は「自社のサプライチェーンを、抜け漏れなく5つの箱に仕分けする地図」だと捉えてください。地図があれば、「うちはDeliver(納品)は得意だがPlan(計画)が弱い」といった具合に、強みと弱みが見えてきます。

💡 ポイント
SCORモデルの価値は「共通言語になること」です。社内の各部門、あるいは取引先と話すとき、同じ枠組みで会話できれば、認識のズレや責任の押し付け合いが減ります。

5つの基本プロセス:Plan / Source / Make / Deliver / Return

SCORモデルの中心は、次の5つのプロセスです。まずはこの5語を覚えるだけで十分です。

プロセス意味具体的な活動の例
Plan(計画)需要を予測し、供給の計画を立てる販売予測、在庫計画、生産計画
Source(調達)必要なモノ・原材料を仕入れるサプライヤー選定、発注、受入検品
Make(製造)仕入れたものを製品に変える生産、組立、加工、品質管理
Deliver(納品)製品を顧客に届ける受注処理、出荷、輸送、配送
Return(返品)不良品・返品を回収・処理する返品対応、リコール、リサイクル

商社や卸売など「自社で製造しない」業態の場合は、Make(製造)を飛ばして Plan → Source → Deliver の流れで考えれば構いません。自社の実態に合わせて使える柔軟さも、このモデルの利点です。

整然と管理された倉庫の棚

6つ目のプロセス「Enable(実現・支援)」

現在のSCORモデルでは、上記5つを下支えするEnable(実現・支援)が加わっています。これはルール作り、データ管理、人材、契約管理など、サプライチェーン全体を機能させるための「土台」にあたる活動です。入門段階では「5つのプロセスを支える縁の下の力持ちがある」と理解しておけば十分です。

⚠️ 注意
SCORモデルを「完璧に導入しよう」と気負う必要はありません。本来は大規模なベンチマーク手法ですが、中小企業はまず5つの箱で自社を仕分けるだけでも十分に価値があります。最初から全部やろうとして挫折するのが一番もったいないパターンです。

自社に当てはめてみる──「弱い箱」を見つける

SCORモデルの実践的な使い方は、5つのプロセスに自社の活動を仕分けし、どこが弱いかを探すことです。たとえば次のような気づきが得られます。

  • Planが弱い:需要予測をしておらず、いつも在庫が余るか足りないかのどちらか。
  • Sourceが弱い:特定の仕入れ先に依存しており、相手の都合に振り回される。
  • Deliverが弱い:出荷ミスや納期遅れが多く、顧客クレームにつながっている。
  • Returnが弱い:返品対応のルールがなく、その都度バタバタ対応している。

こうして「弱い箱」が特定できれば、限られた経営資源をどこに投じるべきかが明確になります。あれもこれも改善しようとするのではなく、最も詰まっている1か所から手をつける——これがSCORモデルを使った改善の第一歩です。

📊 関連ツール
EPAラボ:Source(調達)を見直す際、海外からの仕入れにEPA(経済連携協定)を使えば関税を下げられる場合があります。調達コスト削減の選択肢として確認してみてください。


この記事のまとめ

  • SCORモデルは、ASCMが策定したサプライチェーンの共通言語(地図)
  • 中心は5つのプロセス:Plan(計画)・Source(調達)・Make(製造)・Deliver(納品)・Return(返品)
  • 製造しない業態は Make を飛ばしてOK。自社の実態に合わせて柔軟に使える。
  • 5つを支える土台が Enable(実現・支援)
  • 使い方の基本は、5つの箱に自社を仕分けし「最も弱い箱」から改善すること。

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