前回は在庫を「どう捉えるか」を整理しました。ここからは一歩進んで、「いつ・どれだけ発注するか」を勘ではなく数字で決める方法に入ります。鍵となるのが「発注点」と「安全在庫」という2つの考え方です。
難しい数式は使いません。考え方の本質をつかめば、自社の発注ルールを言葉と簡単な計算で作れるようになります。属人化を抜け出す第一歩として読んでください。
発注点とは「発注の引き金を引くライン」
発注点とは、在庫がこの量まで減ったら発注する、という基準ラインのことです。在庫が発注点を下回った瞬間に発注をかければ、納品されるまでの間に在庫を切らさずに済みます。
なぜ「在庫がゼロになってから」ではダメなのか。発注してから商品が届くまでには時間(リードタイム)がかかるからです。その間にも商品は売れていきます。だから、リードタイムの間に売れる分を見越して、早めに発注の引き金を引く必要があるのです。
🧮 基本の考え方
発注点 = リードタイム中に売れる量 + 安全在庫
例:1日10個売れる商品で、発注から納品まで5日かかるなら、リードタイム中に売れる量は50個。これに「念のための備え(安全在庫)」を足したものが発注点になります。
安全在庫とは「想定外への備え」
もし需要もリードタイムも完全に一定なら、安全在庫は要りません。しかし現実には、急な注文が入ったり、サプライヤーの納品が遅れたりします。こうした「想定外のブレ」に備えるクッションが安全在庫です。
安全在庫を多く持てば欠品リスクは下がりますが、その分だけ在庫(=現金)が増えます。逆に少なくすれば現金は身軽になりますが、欠品リスクは上がります。ここでも前回学んだ「欠品リスクと在庫量のバランス」がそのまま当てはまります。
| ブレの要因 | 安全在庫を増やすべきケース | 安全在庫を抑えられるケース |
|---|---|---|
| 需要の変動 | 売れ行きが読みにくい商品 | 毎月安定して売れる定番商品 |
| リードタイム | 納期が長い・遅れやすい仕入れ先 | 短納期で安定した仕入れ先 |
| 欠品の影響 | 欠品が即クレームになる主力商品 | 代替がきく・急がない商品 |
💡 ポイント
安全在庫は全商品に一律で設定するものではありません。前回のABC分析と組み合わせ、Aランク(主力)は手厚く、Cランクは薄くとメリハリをつけるのが実践的です。
在庫が「回っているか」を測る──在庫回転率
発注ルールを整えたら、その結果として在庫が健全に回っているかを確認したくなります。そのための指標が在庫回転率です。これは「一定期間に在庫が何回入れ替わったか」を表します。
回転率が高いほど、在庫が現金として早く戻ってきていることを意味します。逆に回転率が低い商品は、棚で長く眠っている=現金を固定している可能性が高い。回転率の低い商品を見つけることは、過剰在庫をあぶり出す有効な手がかりになります。
⚠️ 注意
回転率は「高ければ高いほど良い」とは限りません。回転率を上げようと在庫を絞りすぎれば欠品が増えます。回転率はあくまで異常を見つけるための物差しとして使い、極端な数字の商品を点検する、という使い方が現実的です。
この記事のまとめ
- 発注点=在庫がこのラインまで減ったら発注する、という引き金。
- 発注点 = リードタイム中に売れる量 + 安全在庫。
- 安全在庫=需要やリードタイムの「想定外のブレ」に備えるクッション。
- 安全在庫は一律ではなく、ABC分析と組み合わせてメリハリをつける。
- 在庫回転率は、眠っている在庫(過剰在庫)を見つける物差しとして使う。
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調達と在庫が整ったら、次は仕入れたモノを「届ける」段階です。フェーズ3では物流を扱います。まずは国内物流の基本と、輸送手段・委託先の選び方から見ていきましょう。
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