L/C決済の書類チェック:ディスクレを防ぐ「銀行の視点」

L/C決済において、銀行は「貨物」を見ません。提示された「書類」がL/Cの条件と**厳密に一致(Strict Compliance)**しているかだけをチェックします。不一致があれば、銀行は支払いを拒絶する権利を持ちます。


1. 経営者が知るべき「ディスクレ」の代償

書類に不備(ディスクレ)が見つかると、以下のコストとリスクが発生します。

  1. ディスクレ手数料: 1件につき数千円〜1万円程度のペナルティ料金。
  2. 輸入許可の遅延: 銀行間での確認作業に数日〜数週間かかり、その間に港でのデマレージ(保管料)が膨れ上がります。
  3. 支払拒絶のリスク: 相場の下落などを理由に、輸入者が支払いを拒む口実を与えてしまいます(輸出者側のリスク)。

2. 実務担当者のための「3段階チェック」マニュアル

書類が届いたら、以下の3つの視点で「間違い探し」を行ってください。

① L/C条件との一致(L/C vs 各書類)

L/Cに記載された指示が、すべての書類で守られているかを確認します。

  • 品名(Description of Goods): L/Cに書かれた品名と1文字1句同じである必要があります。略語(例:St. を Street)にするだけでもディスクレになる場合があります。
  • 船積み期限・提示期限: L/Cで指定された最終船積み日を過ぎていないか。

② 書類間の整合性(書類 vs 書類)

インボイス、パッキングリスト、B/Lの内容が互いに矛盾していないかを確認します。

  • 数量・重量: インボイスの総重量と、B/Lに記載された重量が一致しているか。
  • 荷印(Shipping Marks): すべての書類で同じマークが記載されているか。

③ B/L特有のチェックポイント

B/Lは有価証券であるため、特に厳格です。

  • Clean B/L: 貨物にダメージがある旨の記載(”Dirty”な記述)がないか。
  • 裏書き(Endorsement): 指図式(Order B/L)の場合、正しく裏書きがなされているか。
  • On Board Notation: 実際に船に載ったことを示す日付とサインがあるか。

3. よくある「ディスクレ」事例集

実務で頻発するミスは、意外にも単純なものです。

  • スペルミス: 社名や住所の打ち間違い。
  • 数量の過不足: L/Cで「約(About)」の許容範囲が指定されていないのに、数量が前後している。
  • 分割船積みの禁止: 「Partial Shipment: Prohibited」なのに、2回に分けて送られてきた。
  • 書類の不足: L/Cで求められた通数の原本・コピーが揃っていない。

4. 【トレードビズの視点】ディスクレが起きた時の「3つの解決策」

もし不備が見つかった場合、以下のいずれかで対処します。

  1. 書類の差し替え: 輸出者に至急作り直させ、銀行へ再提示します(時間がかかります)。
  2. ケーブル・ネゴ(Cable Negotiation): 輸出地の銀行から輸入地の銀行へ「不備があるが買い取ってよいか」を電信で問い合わせ、輸入者が「承諾(Accept)」すれば決済が進みます。
  3. L/G(Letter of Guarantee)決済: 書類が届く前に貨物が着いた場合、銀行の保証状(L/G)を船会社に入れて貨物を先に引き取ります。

まとめ:L/Cは「事前確認」がすべて

L/Cを発行する前(ドラフト段階)で、輸出者と「この条件で書類が作れるか」を徹底的に詰め、「無理な条件(不可能な日付や入手困難な証明書)」を入れないことが、最大のディスクレ対策です。