【第14章】貨物保険の基本〜輸送中の事故から荷物を守るには?

【第14章】貨物保険の基本〜輸送中の事故から荷物を守るには?〜

こんにちは!「ゼロから始める貿易ビジネス入門」の第14章です。
今回からは「第7部:万が一に備える(保険)」のテーマに入ります! これまでの章で、商品の運び方や書類(B/L)の役割について学びました。

しかし、長距離を移動する国際輸送には、「嵐で船が揺れて荷物が海に落ちた」「倉庫が火事になった」「海賊に襲われた」といった、予測不可能なトラブル(危険)がつきものです。
もしそんな事態が起きた時、何千万円という商品の損害を自分たちだけで被るのは絶対に避けたいですよね。そこで貿易ビジネスに欠かせないのが、今回解説する「貨物海上保険(貨物保険)」です!


🛡️ 貨物保険って誰が手配するの?

貨物保険は、輸送中に起こり得る事故による損害をカバーしてくれる保険です。 では、この保険は売主(輸出者)と買主(輸入者)、どちらが手配して保険料を払うのでしょうか?

答えは、第7章で学んだ「インコタームズ(契約条件)」によって決まります!

  • 「CIF」や「CIP」で契約した場合: 売主(輸出者)が、買主(輸入者)のために保険を手配し、保険料を支払う義務があります。
  • 「FOB」や「FCA」などで契約した場合: 売主には保険をかける義務はありません。そのため、買主(輸入者)が自分自身で保険会社に連絡し、保険をかける必要があります。

🚨 勘違いによる未保険に注意!
自分が保険をかけるべき立場なのに「相手がかけてくれていると思っていた…」という勘違いは致命傷になるので、契約条件は必ず確認しましょう!

大海原を航行する大型貨物船
海を越える長旅には、気象の変化や不慮の事故といった予測不能なリスクが常に伴います

🚪 保険は「どこから・どこまで」守ってくれる?

「海上保険」という名前がついていると、「船に乗っている間だけしか守ってくれないの?」と思うかもしれません。

しかし、現在の貨物保険は「倉庫から倉庫まで(Door to Door)」カバーしてくれるのが原則です。 具体的には、輸出者の倉庫で荷物を動かし始めた瞬間からスタートし、長旅を経て、輸入者の最終倉庫で荷物を降ろし終わるまで、全行程の危険を負担してくれます。

※ただし、「港に到着して船から荷物を降ろした後、〇〇日を過ぎたら保険は終了する(船の場合は60日など)」という期限のルールがあるので、荷物が着いたら早めに引き取るようにしましょう。

近代的な物流倉庫の内部
船の上だけでなく、国内の陸上輸送から目的地(倉庫)に届くまで一貫してカバーされます

📋 どの保険を選ぶ?「3つの条件」と「オプション」

貨物保険には、世界共通で使われている「ICC(協会貨物約款)」というルールがあり、カバーする範囲によって大きく3つのレベルに分かれています。 現在主流の「ICC 2009版」では、以下の(A)、(B)、(C)から選びます。

🥇 ICC (A) :オールリスク(全危険担保)

一番範囲が広く、安心な条件です。 火災、沈没だけでなく、荷物を落として壊した、雨や海水で濡れた、盗難にあったなど、偶発的な事故のほぼすべてをカバーしてくれます。 初心者の方や、壊れやすい精密機器などを運ぶ場合は、迷わずこの「(A)条件」を選びましょう!

🥈 ICC (B) :分損担保

中くらいの範囲をカバーする条件です。 火災や沈没、地震などの大きな災害、荷物の落下による破損などはカバーされますが、盗難などは対象外になることがあります。

🥉 ICC (C) :分損不担保

一番範囲が狭く、保険料が安い条件です。 船の沈没や火災、脱線など「輸送手段そのものの大きな事故」によって起きた損害しかカバーされません。 鉄鉱石や木材など、ちょっとやそっとでは壊れない頑丈な貨物によく使われます。

🚨 要注意!「戦争」と「ストライキ」は別料金!
どんなに最強のICC(A)条件を選んでも、「戦争やテロ」「労働者のストライキによる暴動」は通常カバーされません。これらに備えるには、「戦争約款」「ストライキ約款」というオプション(特約)を別に追加する必要があることを覚えておきましょう。


💰 保険金額はいくらかけておけばいい?

「100万円の商品だから、保険も100万円かけておけばいいよね?」 …実は、これでは不十分です!

万が一荷物が全損してしまった場合、単に商品の原価だけでなく、「運賃」や「得られるはずだった利益」も水の泡になってしまいますよね。

そのため、貿易の国際ルールでは、「CIF価格(商品代+運賃+保険料)の110%(つまり1割増し)」を保険金額として設定するのが一般的です。 これなら、もし荷物が沈んでしまっても、かかった経費と最低限の利益(10%)を取り戻すことができます。

書類を確認し、契約や保険について話し合っている様子
CIF価格の110%をカバーすることで、万が一の事故でもビジネスの破綻を防ぐことができます

📝 第14章のまとめ

  • 貨物保険は、長旅のトラブルから自社の利益を守る命綱。
  • FOB条件なら買主、CIF条件なら売主が手配する。
  • 基本は「倉庫から倉庫まで」をカバーしてくれる。
  • 初心者には、一番安心なICC(A)条件(オールリスク)がおすすめ!
  • 保険金額は「CIF価格の110%」が世界のルール。

いかがでしたか?「もしも」の時に会社を守ってくれる貨物保険の重要性が分かったと思います。

次回【第15章】は、貨物保険ではカバーしきれない別のリスク、例えば「輸出した製品が原因で海外のお客さんがケガをしてしまったら?」といったトラブルに備える「PL保険・貿易保険」について解説します。お楽しみに!